僕らの紡いだ音!
『はぁ……。』
3人でもう一度ため息をついたとき、部屋の扉が開いて、女の人が入ってきた。
「ごめんなさいね!ちゃんと受付に言ってなくて!」
「ああ、いや大丈夫ですよ。」
「で、待たせて申し訳ないけど、ちょっとついてきてくれる?」
「えっと、ここで話し合いじゃないんですか?」
「その予定だったんだけど、SINOの予定がいつもより多く入ちゃって、あの子のところに連れて行こうかなって。」
「仕事場に俺ら入っていいんですか?」
「特別にね。」
そういいながら、ウインクする姿はとてもきれいだった。
そうして案内されながらスタジオに近づいたとき、
「ら~」
少女の声が部屋の外にまで響いていた。
それに驚いて思わず聞いた。
「あの、ここの防音設備って…。」
「ちゃんとしているわよ。でも、SINOはしてあっても意味ないのよね。」
「戸を開けてるってことですか?」
「ちゃんと閉めてるわよ。でも、これだけ響くの。小さい頃からいるから皆慣れたけれどね。」
あの子の声は何処まで伸びるのだろう。
そう思いながら、スタジオについた。
別室に入って録音している様子を見る。
みんな静かにしていて、修正箇所を赤ペンで印をつけている。
「よし!SINOちゃん、お疲れさま!これでOKよ!」
「はーい、ありがとうございました。」
そういってヘッドホンを外しながらお礼を言った少女がこちらに気づいた。
そして別室に来て案内してくれた女の人に聞いた。
「あれ、綾乃さん。こっちに連れてきてよかったの?」
「大丈夫よ。社長にはちゃんと確認したから。」
「ふ~ん。そうなんだ。」
「お疲れさま、SINO。はい、お茶。」
「ありがとう、綾乃さん。」
そういってペットボトルを受け取って音声を修正している人たちのほうに行って細かい修正箇所を見ている。それに意見をしてより良いものにしようとしていることがわかる。
「すごいでしょ?」
そう声をかけてくるのはほかのスタッフさんだ。
「いつもこんな感じなんですか?」
「そうね。本人が納得するまで取ることが多いわね。」
「それって、あの子が?」
「そうよ。自分が一番納得できるものにしないと、聞く人だって納得しないし、そもそも聞いてもらえない。だから、一番力を入れているといっても過言じゃないわ。」
それを聞いて、彼女はこの世界のプロなんだと思い知らされた。
そんな現場を見せてもらえるなんて、僕らはどれだけ幸運なんだと思った。