匣庭 -ハコニハ-
自分が何をしてきたかは愚か、名前までも思い出せないなんて!

思い出せないという苦痛と恐怖に乗っ取られ、

私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ私は誰だ

と不意に口から滑りでていた。

どうして思い出せないのか自分へのイラつきが増す一方、口からは勝手に同じことが連呼されている。(なぜ思い出せない…!?なぜ同じことを繰り返し言うんだ…!)

イラつきはさらに増していき、自分ではどうしようもなくなりかけた時

"ゴーン"

耳をつんざくほどの音量で鐘の声が部屋中にこだました。
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