匣庭 -ハコニハ-
音への驚きに体を縮め耳を塞ぎ、バクバクと脈打つ心臓をなだめる。

(大丈夫だ……。大丈夫だ……。)

細やかな深呼吸を繰り返し、曇った視界から自分を取り戻す。

やがて、呼吸はゆっくりと規則正しくなってきた。だが、冷たい空気は私を軽蔑していた。

…実に腹立たしい。

無理に立ち上がったせいか、目眩を催す。
右に傾き反射で足もオロオロとでる。今度は左に…そしてまた体制を整え…と繰り返し、ようやく意識がはっきりしてきた。

扉の先は真っ暗で何も見えない。

だが私は本能的に "その先へ進まなければならない"と感じた。

数歩扉の方を歩いたところ、

"ビビビ"

と背後から電子音が鳴った。
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