婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!
 どうして、自分に会いにわざわざ王都を出てきたのか。
 そしてあのエリーは、彼がサーラに会いに来たことを知っているのか。
 いろいろと考えていると、ここでの静かな生活でようやく落ち着いていた心がまた乱れて、サーラは壁に手をついた。
 そうしないと、立っていることもできなかったのだ。
「サーラ?」
 カーティスの手が、サーラの腕に触れる。
 倒れそうになった自分を、心配してくれたのかもしれない。
でも彼に触れられていると思うだけで、ますます血の気が引いていく。
「わ、わたしは大丈夫です。ですから、どうか、手を離してください……」
 無礼だと怒鳴られるかもしれないが、それでも彼に触れられているよりはましだ。
 震える声でそう言ったサーラの姿に、カーティスはひどくショックを受けたような顔をして、そっと離れた。
「……すまない。サーラ。ああ、俺は君をこんなにも傷つけていたのか。本当に、すまなかった」
 でも彼はなぜか、いつものように怒鳴ったりせず、そう謝罪を繰り返していた。
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