婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!
 サーラは俯いたまま、首を横に振る。
 それは謝罪を拒絶するように見えるしぐさだったが、今のサーラにはそうするのが精一杯だった。
 どう受け取ったのか、カーティスはしばらく黙ったあと、こう言って去って行った。
「また、明日来る」
「えっ……」
 サーラは呆然として、その後ろ姿を見送った。
 たしかに彼に、ここまで来られるのは迷惑だと伝えることができなかったし、急に謝罪していた理由を聞くこともできなかった。
 でもまさか、彼が明日もまたここを訪れるとは思わなかった。
(そんな……。どうしよう……)
 理由なんて聞きたくない。
 今さら謝罪だって、されたくはない。
 もうサーラの中ではすべて、終わったことなのだ。
 ようやく手にした平穏は、わずか十日ほどであっさりと崩れてしまったようだ。
(もう関わらないでほしい。わたしの望みは、ただそれだけだったのに……)
 それすらも叶わないなんて思わなかった。
 ここに来てようやく解放されたと思ったのに、逃れられなかった。
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