婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!
 そう思うと絶望しかない。
 修道院でも駄目ならば、もう国外にでも逃げるしかないのだろうか。
 その夜は食事も喉を通らず、眠ることもできなかった。
 他の修道女たちは、あれがこの国の王太子のカーティスであることに気が付いたようだ。
 彼女たちも貴族の子女だったのだから、当然かもしれない。
 それでも何も聞かず、気分が優れないサーラの面倒を見てくれた。
 その優しさが、泣きたくなるくらい嬉しかった。
 できればいつもの気まぐれであってほしい。
 切実にそう願っていたが、翌日にも宣言通り、カーティスは修道院を訪れた。
 でも今度はサーラの部屋ではなく、あらかじめ修道院の談話室に案内してもらうことにした。
 さすがに元婚約者とはいえ、男性とふたりきりになるのは避けたほうがいい。修道院の院長にサーラが相談すると、雑用係のウォルトが同席してくれることになった。
 彼は部屋の隅に座っていて、中央の椅子にはサーラとカーティスが向かい合って座る。
「……」
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