婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!
「ご婚約されたのでしょうか。それは、おめでとうございます。ですが、わたしはもうただの修道女です。わざわざご報告いただかなくとも……」
「違う!」
 カーティスはサーラの言葉を強い口調で遮った。
「エリーと婚約などあり得ない。彼女は聖女ではなかった。しかも、嘘を言って君を貶めていた」
「……」
 そう言う彼を、サーラは冷ややかに見つめていた。
 エリーが聖女ではないなど、わかりきっていたことだ。
 彼女が嘘を言ったのはたしかだが、サーラを貶めたのはエリーではなく、それを真に受けて、調べもせずに信じたカーティスではないか。
「サーラ」
 冷たいサーラの視線に気が付いて、カーティスは悲しそうに目を伏せる。
「本当に、すまなかった」
 彼はまた、サーラが望んでなどいない謝罪を繰り返す。
「簡単に騙されてしまったのは、俺の責任だ。あの伝説の聖女が再びこの国に現れたのだと興奮して、事実確認を怠ってしまった」
 加害者がそんな目をするなんてずるい、と思う。
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