婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!
 婚約者である公爵令嬢を差し置いて、男爵令嬢をエスコートする彼の姿に、周囲も色々な噂を囁く。
 学園でも王城でも、屋敷でさえも気が休まらない。
 サーラはもう疲れ果てていた。
 だから昨日の夜会でカーティスに、聖女を虐げた女と結婚するつもりはない。婚約を破棄すると言われたとき、まったく身に覚えがないにも関わらず、言い訳もせずに頷いたのだ。
 勝手に婚約破棄に同意したサーラに、両親は怒った。
 今まで一度も逆らったことのない娘だったから、父の怒りも相当なものだったのだろう。
 思えば、父にはそれなりの思惑があって、エリーとカーティスの件を放置していたのだろう。
 王太子から婚約破棄を言い渡されたその日のうちに、エリーは修道院に送られることになった。
 母はさすがに狼狽えていたが、どんなことがあってもあの父が考えることはない。それがわかっていたから、サーラは淡々と母に別れの挨拶を述べた。
 実際、王太子のカーティスから、あのエリーから解放されるなら、それでもかまわないと本気で思っていた。
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