冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「俺が優を見つけたところまでは、覚えてるか?」
コクリと首を縦に振ると、一矢さんもひとつ頷いて話しはじめた。
「直後に駆けつけた良吾に、車で家まで送ってもらった。それがおとといのことで、今は二晩開けた朝だよ」
そんなに長く眠っていたのかと驚く私に、一矢さんが笑いかけてくれる。
「あの日、仕事中に良吾から三橋陽が帰国していると連絡がきたんだ。まさかと思ったが、念のため優になにかされるといけないからと、急いで帰宅した」
その先に待ち受けていただろう状況を想像して、思わず顔をしかめてしまった。それを一矢さんが見逃すわけもなく、慰めるように手を握ってくれる。
「俺の認識が甘かったようだ。優に電話をしても出ないからおかしいと思いながら部屋に入ったら、三橋陽が待っていた。彼女の言い分は、あまりにもばかげていた。本来の結婚相手は自分だったのだからと、優が自発的に出ていったように言っていたが、嘘をついているのは明白ですぐに追い出したよ。俺を愛していると言ってくれた優が、あんな横暴な振舞に簡単に従うなんて思えなかったからね」
あのとき、初めて陽に抵抗をした。これまでみたいに言われるまま耐えていたら、本当に大切な人を失いかねないと心底怖く思った。
そんな自分を、一矢さんも信じてくれていた。彼のこのとろけるような笑みを見たら、嬉しさで涙が滲んできそうだ。
コクリと首を縦に振ると、一矢さんもひとつ頷いて話しはじめた。
「直後に駆けつけた良吾に、車で家まで送ってもらった。それがおとといのことで、今は二晩開けた朝だよ」
そんなに長く眠っていたのかと驚く私に、一矢さんが笑いかけてくれる。
「あの日、仕事中に良吾から三橋陽が帰国していると連絡がきたんだ。まさかと思ったが、念のため優になにかされるといけないからと、急いで帰宅した」
その先に待ち受けていただろう状況を想像して、思わず顔をしかめてしまった。それを一矢さんが見逃すわけもなく、慰めるように手を握ってくれる。
「俺の認識が甘かったようだ。優に電話をしても出ないからおかしいと思いながら部屋に入ったら、三橋陽が待っていた。彼女の言い分は、あまりにもばかげていた。本来の結婚相手は自分だったのだからと、優が自発的に出ていったように言っていたが、嘘をついているのは明白ですぐに追い出したよ。俺を愛していると言ってくれた優が、あんな横暴な振舞に簡単に従うなんて思えなかったからね」
あのとき、初めて陽に抵抗をした。これまでみたいに言われるまま耐えていたら、本当に大切な人を失いかねないと心底怖く思った。
そんな自分を、一矢さんも信じてくれていた。彼のこのとろけるような笑みを見たら、嬉しさで涙が滲んできそうだ。