若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
マツリカのあたまを撫でながら長谷が説明する。シンガポールを拠点としているケミカルタンカー事業を海上で支える立場にいるという彼は、久しぶりの休暇を娘とふたりで過ごしていたのだという。海に慣れている娘が足を踏み外して溺れるなんて信じられないと呆れながらも無事戻ってきたのを見て安堵の表情を浮かべている。
ふたりの会話を眺めていた伊瀬が、ふと思い出したようにカナトに告げる。
「おそれいりますカナトさま。わたくし長谷氏とすこし込み入った話をしたいので彼をお借りしてもよろしいでしょうか」
「そうだな、こちらからも頼みたい。鳥海の上層部に現状報告できるなら直接したいことがある」
伊瀬につられて長谷も頷く。不安そうな表情になるマツリカに「仕事のはなしだよ」と長谷が父親の顔になって微笑する。
「そっか。じゃありいか、お兄さんと一緒に待ってる!」
「おう……そういうわけで、娘をお願いしても? このビーチハウスのなかならどこにいてもかまわないよ」
「はい、大丈夫です」
カナトの大人びた反応に安心したのか、伊瀬と長谷は奥にあるというプライベートルームへ姿を消していく。
おとなふたりを見送ったマツリカはカナトに日本語でゆっくりと声をかける。
「お兄さん、たすけてくれたお礼に、とっておきの場所、りいかが教えてあげる!」
ふたりの会話を眺めていた伊瀬が、ふと思い出したようにカナトに告げる。
「おそれいりますカナトさま。わたくし長谷氏とすこし込み入った話をしたいので彼をお借りしてもよろしいでしょうか」
「そうだな、こちらからも頼みたい。鳥海の上層部に現状報告できるなら直接したいことがある」
伊瀬につられて長谷も頷く。不安そうな表情になるマツリカに「仕事のはなしだよ」と長谷が父親の顔になって微笑する。
「そっか。じゃありいか、お兄さんと一緒に待ってる!」
「おう……そういうわけで、娘をお願いしても? このビーチハウスのなかならどこにいてもかまわないよ」
「はい、大丈夫です」
カナトの大人びた反応に安心したのか、伊瀬と長谷は奥にあるというプライベートルームへ姿を消していく。
おとなふたりを見送ったマツリカはカナトに日本語でゆっくりと声をかける。
「お兄さん、たすけてくれたお礼に、とっておきの場所、りいかが教えてあげる!」