若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
* * *
『あたし、キスしたことないの……』
カナトとのシンガポールでの出逢いを忘れているのだから、十五年前に交わした結婚の約束と一緒に塩辛いキスをしたこともすっかり忘れているだろう。そう考えていたカナトだったが、まさか他の異性ともキスしたことがないとは思いもしなかった。恥ずかしそうに伝えてきた彼女に思わず「嬉しい」なんて口にしてしまったから、怪訝そうな顔をされてしまった。そのあげく、「女のひとを喜ばせる言葉は大切にしろ」だとか「コンシェルジュには不適切」だとか減らず口を叩いてくる。
――俺はマツリカだからキスしたいんだし、その先だって求めているんだよ。
「んっ……」
「鼻で息をするんだ……そう、上手だね」
カナトは抵抗する彼女を封じ込めるようにソファの上に彼女の身体を沈ませて、やさしく啄むようなキスを唇に何度もしたかと思えば、次第に口唇をふれあわせる時間を伸ばしていき、ついには時間を止めるような口づけを成功させる。
呼吸困難に陥りそうな彼女を宥めながら、自分のために着替えたワンピース越しに身体のラインをなぞっていけば、マツリカは驚いたように身体を震わせる。
『あたし、キスしたことないの……』
カナトとのシンガポールでの出逢いを忘れているのだから、十五年前に交わした結婚の約束と一緒に塩辛いキスをしたこともすっかり忘れているだろう。そう考えていたカナトだったが、まさか他の異性ともキスしたことがないとは思いもしなかった。恥ずかしそうに伝えてきた彼女に思わず「嬉しい」なんて口にしてしまったから、怪訝そうな顔をされてしまった。そのあげく、「女のひとを喜ばせる言葉は大切にしろ」だとか「コンシェルジュには不適切」だとか減らず口を叩いてくる。
――俺はマツリカだからキスしたいんだし、その先だって求めているんだよ。
「んっ……」
「鼻で息をするんだ……そう、上手だね」
カナトは抵抗する彼女を封じ込めるようにソファの上に彼女の身体を沈ませて、やさしく啄むようなキスを唇に何度もしたかと思えば、次第に口唇をふれあわせる時間を伸ばしていき、ついには時間を止めるような口づけを成功させる。
呼吸困難に陥りそうな彼女を宥めながら、自分のために着替えたワンピース越しに身体のラインをなぞっていけば、マツリカは驚いたように身体を震わせる。