若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 彼のキスが上手すぎるからいけないんだと、マツリカは言い返そうとして、けっきょく彼に塞がれる。まるで磁石のS極とN極のように。いちどぴたりとくっつくとはなれることができなくなるみたいに――ふたりは練習という名のキスを深めていく。

 この日の朝のマツリカは、ただただ彼の口づけに酔い痴れることしかできなかったのだった。
< 116 / 298 >

この作品をシェア

pagetop