若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
前菜はハワイの魚介類がふんだんにつかわれた南国風のマリネことゼビーチェとアメリカ発祥のカニ料理であるクラブケーキ。特にクラブケーキはカニの身に刻み玉ねぎとパン粉などでつくったハンバーグのようなもので、子どもから大人まで楽しめる一品で、マツリカも好んで食べる。ふだんなら喜んでかじりつくであろうクラブケーキを見ても食欲が湧かないのは自分でも重症だなと思いながら、カナトの方へ視線を向ける。
「なんだか食べづらいな」
「ごめんなさい、使用人控室に戻りま……」
苦笑を浮かべるカナトから逃げ出すようにマツリカがソファから立ち上がれば、彼は慌ててカトラリーをテーブルに置いて彼女を引き留める。
「だめだ……昼食のあと、何も口にしてないだろう?」
「でも」
「ビスクなら飲めるだろ。ロブスターの旨味がぎゅっと詰まっているぞ」
「なんだか食べづらいな」
「ごめんなさい、使用人控室に戻りま……」
苦笑を浮かべるカナトから逃げ出すようにマツリカがソファから立ち上がれば、彼は慌ててカトラリーをテーブルに置いて彼女を引き留める。
「だめだ……昼食のあと、何も口にしてないだろう?」
「でも」
「ビスクなら飲めるだろ。ロブスターの旨味がぎゅっと詰まっているぞ」