若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
キスするのだってはじめてだと暴露した彼女にとって、すべてをさらけださせるのはまだまだ時間がかかるのだろう。
「クルーズはまだ二ヶ月もあるんだから、決めつけるのは早いよ。それに、俺、言ったよね――最後まで抱きたいって」
「あれは、事故の真相がわかったら――」
「事故の原因は急な天候不良による二隻の操縦ミス。アフリカ沖の海流はベテラン船長でも運行するのが難しい場所だ。貴女の父親は衝突時にその海流に巻き込まれて死んだと考えられる」
とつぜん真面目な声で語り出すカナトに、マツリカは苛立ちを募らせる。
自分が早くマツリカを抱きたいからって、まるで彼女にすべてを諦めろと言わせるような冷たい声音だ。
「ならばどうして! バパはいないものとして扱われようとしたの? 死んだということを発表したのは事故が起きてからかなりの時間が経っていたはずよ。あたしたちは帰ってくるのを待っていたのに、帰ってきたのは……」
「マツリカ」
「カナトは鳥海の人間だから、きっと会社をフォローするよね。お母さんは会社の隠蔽体質に不信感を持った。だから」
「クルーズはまだ二ヶ月もあるんだから、決めつけるのは早いよ。それに、俺、言ったよね――最後まで抱きたいって」
「あれは、事故の真相がわかったら――」
「事故の原因は急な天候不良による二隻の操縦ミス。アフリカ沖の海流はベテラン船長でも運行するのが難しい場所だ。貴女の父親は衝突時にその海流に巻き込まれて死んだと考えられる」
とつぜん真面目な声で語り出すカナトに、マツリカは苛立ちを募らせる。
自分が早くマツリカを抱きたいからって、まるで彼女にすべてを諦めろと言わせるような冷たい声音だ。
「ならばどうして! バパはいないものとして扱われようとしたの? 死んだということを発表したのは事故が起きてからかなりの時間が経っていたはずよ。あたしたちは帰ってくるのを待っていたのに、帰ってきたのは……」
「マツリカ」
「カナトは鳥海の人間だから、きっと会社をフォローするよね。お母さんは会社の隠蔽体質に不信感を持った。だから」