若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「ハゴロモを買い取ったっていうし、先輩もついに海運王としての一歩を踏み出された感じですね」
「――ハゴロモの運営母体は日乃じゃなかったのか」
「とっくに売却されたよ。だから鳥海の人間が視察と称してハゴロモに乗船しているんじゃないか」
「それでりいかと……」
「仲睦まじそうに歩いていたけど、婚約はまだなの? キャッスルシーの社長令嬢と鳥海の若き海運王ならお似合いだね」
「親父は何も言ってなかったぞ」
「え? 両家公認じゃないの? それじゃあ旅先で出会って恋に落ちたパターン? それはそれでドラマチックだねえ!」

 イッセーのはしゃぐ声がマイルを苛立たせる。婚約? オレのりいかが? なんで先輩に奪われなきゃならねえんだ? こっちは彼女にふさわしい男になれるよう親父の会社を引き継いで、さらなる成果を出そうと必死になっているのに、豪華客船でランデブー? そんなの……

「許されるわけねえよ」
「マイルくん? いくらお姉さんがすきだからってそこで発狂しないでくれる?」
「うるせえ。イッセー、お前のお節介には感謝してやる。だがな、これだけは言っておく」

 ――りいかは、オレのものだ。
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