若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
   * * *

 これは罰だよとカナトに深い口づけをされたマツリカだったが、なぜ罰せられたのかわからない。
 ただ、彼と毎日のようにキスをしていると自分が大切にされていると錯覚してしまう。お見合いのはなしについてもききたいのに。

「んっ、ダメだってば……キスだけって」
「だから、キスだけだよ。身体中にキスするんだから」
「ひゃ……」

 レモンの味の爽やかなキスに酔いしれていたマツリカだったが、ずっと避けていた部屋の一番奥に鎮座しているキングサイズのベッドに運ばれて、慌てて身体を起こそうとする。
 けれど彼のブラックダイヤモンドのような瞳はギラギラと煌めいたまま、ふだんの穏やかななりを隠してマツリカを凝視している。

「カナト……」
「いいだろ? マツリカを堪能したいんだ」

 マツリカが着ている花柄の前ボタン式ワンピースは、いつの間にか彼の手ではずされてただの布切れと化していた。レースが縁取られた下着越しに、おおきなカナトの手がふれる。

「ぁ」
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