若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 こんなの知らない。混乱するマツリカを宥めるように彼の手が彼女の髪を撫でている。それでも彼のキスの嵐は止まらない。荒天で運転を誤る船舶のように、マツリカの身体は自分で律することのできない快感を与えられていく。

「ゃあっ――!」

 執拗に胸だけを愛されて、マツリカはそのまま軽く達してしまう。
 カナトの手はショーツに伸び、ブラジャーのときのようにあっさりと奪っていく。
 すべてをさらけだされてしまった。
 こわいのに、マツリカの心臓はひどく高鳴っている。
 身体でのサービスは業務外だって、あれだけいっていたのに……なぜだろう、彼に気持ちいいことをしてもらうのは、恥ずかしいけれど、すこし嬉しい。
 たとえクルーズのあいだだけのかりそめの恋人だとしても。

「マツリカ。マリカー。マツリーカ」
「……ぁんっ」
< 168 / 298 >

この作品をシェア

pagetop