若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 名前を呼ばれながら、敏感な場所を口づけられて、このままとけて消えてしまいそうな錯覚に陥る。さいごまではしないという彼の言葉に甘えて、マツリカは自分だけが快楽の淵で溺れてしまう。
 身体のあちこちに彼の独占欲の証となるであろう真っ赤な薔薇の花を刻まれて――やがて、彼女は意識を飛ばして眠ってしまった。

「寝ちゃった……?」

 はだかにされて身体のあちこちにキスを受け、気持ちいいことを教え込まれた初な身体がキャパオーバーしたのを見て、カナトは満足そうに彼女を見つめる。クルーズがはじまってちょうど折り返し地点、まだ抱くことは許されていないけれど、すこしずつカナトはマツリカを自分の色へと染めはじめていた。
 すきだから気持ちよくなってもらいたいというこの想いは果たして彼女に通じたのだろうか。それともまだ、恋人役の任務だと誤解したままなのだろうか。どちらでもいい。クルーズが終わる頃にはほんものの恋人になっているのだから。
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