若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
《3》
自分がなぜはだかのままベッドでカナトと眠っているのか、目を覚ましたマツリカは思い出せずにいた。ついに最後までシてしまったのだろうか。それにしては、痛みを感じない。たぶん、ただひたすら罰という名の甘い責め苦を浴びせられていただけだったのだろう。
「……起きたのか」
「カナト」
「昨日はごめん。我慢できなかった」
キスだけで済ませることができなかったと悔やむような彼の言葉に、マツリカはああと落胆する。
男のひとなら誰にだって性欲というものがある。恋人役である自分に対して、彼が知らず知らずのうちに劣情を溜めていることにマツリカも気づいていた。それが単なる本能なのか、そこに感情がついてきているのかは見極められないけれど。
「でも、最後まではしてない、でしょ?」
「ああ……してもよかったのか?」
「いいわけないわよ」