若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
豪華客船ハゴロモでの南太平洋クルーズも半分を過ぎた十一月下旬。ニュージーランドでデートらしい観光をしたカナトとマツリカだったが、恋人契約を結んで一か月が経過したところでお目付け役の伊瀬が苦言を呈してきた。彼女を束縛しすぎだと、いくらオーナー権限で周りの人間を黙らせることができるからといって、所有物のように彼女を連れまわす姿はいただけないと。
いま、彼女は懇意になった王夫妻と船内シアターの映画を観に行っている。カナトも同伴したかったが、仕事が溜まっているのを伊瀬に見咎められて渋々護衛にまかせて部屋に籠っているところである。
「彼女はクルーズのあいだは俺の傍にいることを是としている。当事者ふたりが問題ないのなら構わないだろう?」
「だからですよ。いままで女性を侍らせることのなかった彼方がひとりの女性に入れこんでいる。はたから見ると若き海運王が悪女に騙されているように見えるんです。きっと王氏もそのことを危惧してらしたと思いますよ」
「悪女?」
いま、彼女は懇意になった王夫妻と船内シアターの映画を観に行っている。カナトも同伴したかったが、仕事が溜まっているのを伊瀬に見咎められて渋々護衛にまかせて部屋に籠っているところである。
「彼女はクルーズのあいだは俺の傍にいることを是としている。当事者ふたりが問題ないのなら構わないだろう?」
「だからですよ。いままで女性を侍らせることのなかった彼方がひとりの女性に入れこんでいる。はたから見ると若き海運王が悪女に騙されているように見えるんです。きっと王氏もそのことを危惧してらしたと思いますよ」
「悪女?」