若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
   * * *

「カオルくんの魅力はね、あのあどけない表情のなかに色気が入っているところなのよ! まだ十五才だっていうのに有罪的(罪深いわ)!」

 王夫妻と船内シアターで映画鑑賞をしていたマツリカは、夫人につれられて船内のパークにあるベンチに腰掛け、彼女の楽しそうなお喋りに耳を傾けている。さきほどまで一緒に映画を観ていた王氏は仕事の電話があるからと一足先に部屋へ戻った形だ。
 映画を観ているあいだだけ預けるつもりだったという一人息子の浩宇はいまもナーサリールームで昼寝中だったので、目が覚めるまで時間をつぶしたいという夫人に誘われ、ハゴロモ内部に建設された吹き抜け天井が印象的なセントラルパークに足を踏み入れたマツリカである。
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