若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
思わず泣き出しそうな彼女を前に、カナトは身を乗り出して抱きしめていた。
「だが、噂の段階だろう? 実際に東京に戻るまではわからないんだから、そんなに慌てるなよ」
「……ごめんなさい。ただ、キャッスルシーとも懇意にしている王夫妻からそのはなしをきいたから」
「信憑性が高いってことか? だけど、そんなことはさせないよ。マツリカは俺の恋人なんだから」
「でも、クルーズのあいだだけ、でしょ?」
不安そうに身を寄せてくるマツリカの髪をやさしく撫でながら、カナトは告げる。
「いや、今度は俺が、マツリカの男避けになってやるよ。クルーズが終わってからも、マツリカが困らないように」
「……もうじゅうぶん困っているんだけど」
弱々しく呟くマツリカの瞳を覗きこんで、カナトはくすりと笑う。
「ならば俺と婚約すればいい。相手が鳥海の若き海運王だとわかれば、向こうだって黙るはずだ」
「恋人のふりの次は、婚約者のふり? そんな、不誠実なことばっかりしていて大丈夫なの?」
「どこが不誠実か? 俺は困っているマツリカを救いたいだけだぞ」
「だ、だからそうじゃなくて」
「だが、噂の段階だろう? 実際に東京に戻るまではわからないんだから、そんなに慌てるなよ」
「……ごめんなさい。ただ、キャッスルシーとも懇意にしている王夫妻からそのはなしをきいたから」
「信憑性が高いってことか? だけど、そんなことはさせないよ。マツリカは俺の恋人なんだから」
「でも、クルーズのあいだだけ、でしょ?」
不安そうに身を寄せてくるマツリカの髪をやさしく撫でながら、カナトは告げる。
「いや、今度は俺が、マツリカの男避けになってやるよ。クルーズが終わってからも、マツリカが困らないように」
「……もうじゅうぶん困っているんだけど」
弱々しく呟くマツリカの瞳を覗きこんで、カナトはくすりと笑う。
「ならば俺と婚約すればいい。相手が鳥海の若き海運王だとわかれば、向こうだって黙るはずだ」
「恋人のふりの次は、婚約者のふり? そんな、不誠実なことばっかりしていて大丈夫なの?」
「どこが不誠実か? 俺は困っているマツリカを救いたいだけだぞ」
「だ、だからそうじゃなくて」