若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
東京についたら初恋の君が待っているのではないか、と声をあげようとしたマツリカの口を彼の手が塞ぐ。これ以上、よけいなことを口にするなと言いたいらしい。
「……マツリカ。キャッスルシーの不穏な動きに俺が気づいていないと思う?」
え、と目をしばたかせる彼女の頬を撫でながら、カナトは言葉をつなげていく。
「城崎清一郎が引退を表明し、前妻の一人息子であるマイルが後継についたのはほんの一年前だ。彼は着実に実績を積み上げ、海外にも目を向けるようになっている。それもマツリカ、貴女が拠点にしているアメリカをはじめ、鳥海が持つ海外の現地法人を挑発するかのようにさまざまな計画を発表しているんだ。言っておくが、まだ計画の段階だから俺たちは彼の動きを黙って見ている。こちらの商売を奪い取りかねないことはわかっているが、彼にその計画が実行できるだけのちからがあるとは、残念ながら思えない」
「――カナト」
「……マツリカ。キャッスルシーの不穏な動きに俺が気づいていないと思う?」
え、と目をしばたかせる彼女の頬を撫でながら、カナトは言葉をつなげていく。
「城崎清一郎が引退を表明し、前妻の一人息子であるマイルが後継についたのはほんの一年前だ。彼は着実に実績を積み上げ、海外にも目を向けるようになっている。それもマツリカ、貴女が拠点にしているアメリカをはじめ、鳥海が持つ海外の現地法人を挑発するかのようにさまざまな計画を発表しているんだ。言っておくが、まだ計画の段階だから俺たちは彼の動きを黙って見ている。こちらの商売を奪い取りかねないことはわかっているが、彼にその計画が実行できるだけのちからがあるとは、残念ながら思えない」
「――カナト」