若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 抱き上げられてそのままベッドのうえに乱暴に下ろされたマツリカは、彼に与えられるキスで酸欠しそうになっている。どうしてカナトが怒っているのか理解できないまま、彼女は彼の手でドレスを脱がされていく。待って、と首を振って抵抗するマツリカを嘲笑うように、プツッ、とドレスの飾りボタンが飛び散り、床に落ちる。ふだんなら丁寧に脱がしてくれるカナトの手は、ドレスを破きそうな勢いでマツリカの身を包むものを剥いていた。白い肌に、何度も彼に痕を刻まれて鬱血したままになっている紅の花が顔を出す。カナトが自分のモノだと独占欲のままにつけたキスマーク。彼はこのクルーズでひたすら彼女を愛でつづけた。どうすれば彼女が気持ちよくよがってくれるかも、どうすれば腰が抜けてしまうかも、どうすれば啼きながら達するかも、識っている――ただ、どうすれば自分だけのものになってくれるかだけが、わからない。

「……ぁあ、カナ、ト」
「貴女は義弟のためにこの身を捧げることができるのか? もう、この身体は俺がすみずみまで味見しているというのに」
「いきなり、ひどい……ッ」
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