若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 彼にきつく抱きしめられて、素肌がカナトの胸板に擦れる。マツリカがはぁ、と艶やかな息をつく。クルーズを通して彼の手で女としての悦びを与えられつづけてきた彼女は気づかなかった。そのちょっとしたしぐさひとつひとつにカナトが欲情していることに。

「なら、その尾鰭も必要ないね」
「あ……」

 彼の手が腰にまわり、たわんでいた水着をしゅるりと脱がせていく。水気を帯びた水着を床に投げ捨てられ、マツリカはベッドのうえで一糸まとわぬ姿にされてしまう。プールの水で濡れたままの足元に舌を這わせ、カナトはうっとりした表情で彼女の足を撫で上げていく。

「ああ、こんなにびしょびしょにして。プールの水だけじゃないよね……とろとろで甘くてしょっぱい」
「!」
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