若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
マツリカが懐かしそうに口にするのを、カナトが複雑な表情できいている。ここでいう彼女の家族とは、母と城崎清一郎と義弟マイルのことだからだ。
「そういうカナトは子どもの頃、どこで過ごしていたの? マイくんと同じ高専に通っていたってことは下宿でもしていたの?」
アメリカへ留学したマツリカと同時期にマイルは父の跡を継ぐため瀬戸内海沿いに位置している海洋商船高専へ進学している。県外からの進学者が多い専門性の高い学校ゆえ、独り暮らしをしている学生が多く、マイルも清一郎に紹介された漁師の夫婦のもとで約五年世話になっていた。カナトはどんな風に学校に通っていたのだろうとふと疑問に思い、マツリカがはなしをふれば、彼の返事はあっさりしたものだった。
「母校は父方の実家から近いんだ。もともと四国のちいさな造船所がルーツだから。俺は進学するまでは母と向こうの祖父母が暮らしている東京にいたんだ。けど、父は忙しいひとだから世界各地を飛び回っていて……」
「いまのカナトみたいに?」
「そういうカナトは子どもの頃、どこで過ごしていたの? マイくんと同じ高専に通っていたってことは下宿でもしていたの?」
アメリカへ留学したマツリカと同時期にマイルは父の跡を継ぐため瀬戸内海沿いに位置している海洋商船高専へ進学している。県外からの進学者が多い専門性の高い学校ゆえ、独り暮らしをしている学生が多く、マイルも清一郎に紹介された漁師の夫婦のもとで約五年世話になっていた。カナトはどんな風に学校に通っていたのだろうとふと疑問に思い、マツリカがはなしをふれば、彼の返事はあっさりしたものだった。
「母校は父方の実家から近いんだ。もともと四国のちいさな造船所がルーツだから。俺は進学するまでは母と向こうの祖父母が暮らしている東京にいたんだ。けど、父は忙しいひとだから世界各地を飛び回っていて……」
「いまのカナトみたいに?」