若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
   * * *

 クリスマスイブ前日のディナーはバリの伝統的な食事だった。スパイスとキャッサバの葉などの野菜を詰めた豚を串に刺し、炭火のうえで回しながらローストしたバビグリン。白米と一緒にスパイシーなチキンや色とりどりの野菜などをピリ辛のソース、サンバルマタで味付けしたバリ風チキンライスことナシアヤムやナシチャンプル。付け合わせには万能食材の豆腐(タフ)でつくられた春巻きのようなもの。ジンバラン湾で採れた海老や蟹などのシーフードグリルも出てきて、デザートの米粉とココナッツのケーキであるパンチョンがでてきた頃にはお腹がいっぱいになってしまった。

「船のなかで食べる料理も美味しいけど、現地の料理もいいものだね」
「カナトはなんでも美味しそうに食べるよね」
「だって美味しいじゃないか。ちなみに明日はクリスマスの特別ディナーを注文したからお楽しみに」
「もう……」
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