若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
顔をくしゃくしゃにしながら笑いはじめるカナトを不気味そうに見つめるマツリカに、彼はごめんごめんと慌てて言葉を紡ぐ。
「鳥海本社にいる人間は、俺の初恋を知ってるのが大半だ。ナガタニの娘が海上コンシェルジュとしてアメリカ勤務していることを知った西島が父親の代わりにハゴロモクルーズの視察に俺を推したのも、マツリカと再会させるためだったのか……!」
若き海運王の初恋をこのままにしておくことはできないと、彼らは陰で動き、支えあっていたのだろう。彼が求める女性の所在を見守りながら、いつか誤解をといて約束を遂げさせる、そのために。
「マツリカ、指輪の裏側を見てごらん」
「Dear, my festival flower……これ、あたしのこと?」
「お守りのサファイアだったらしい。伊瀬はもしかしたらこの指輪を身に着けていなかったから事故にあったのかもしれない、なんて非現実的なことを言っていたが」
「そんなわけないじゃない。あれは不運な事故だって、ハワイで仰木さんもおっしゃってたもの」
「――納得、してくれたのか?」
「この指輪を手渡されて、あのはなしをされたら……信じるしかないじゃない」
「鳥海本社にいる人間は、俺の初恋を知ってるのが大半だ。ナガタニの娘が海上コンシェルジュとしてアメリカ勤務していることを知った西島が父親の代わりにハゴロモクルーズの視察に俺を推したのも、マツリカと再会させるためだったのか……!」
若き海運王の初恋をこのままにしておくことはできないと、彼らは陰で動き、支えあっていたのだろう。彼が求める女性の所在を見守りながら、いつか誤解をといて約束を遂げさせる、そのために。
「マツリカ、指輪の裏側を見てごらん」
「Dear, my festival flower……これ、あたしのこと?」
「お守りのサファイアだったらしい。伊瀬はもしかしたらこの指輪を身に着けていなかったから事故にあったのかもしれない、なんて非現実的なことを言っていたが」
「そんなわけないじゃない。あれは不運な事故だって、ハワイで仰木さんもおっしゃってたもの」
「――納得、してくれたのか?」
「この指輪を手渡されて、あのはなしをされたら……信じるしかないじゃない」