若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
ベッドの上に散らされた五色の花。祭祀の花を見下ろしながら、マツリカは苦笑する。my festival flower……マツリカの名前の由来となった五色の花、そしてそのなかの純白のジャスミンから、父は自分をサンスクリット語で茉莉花を意味する“マリカー”と呼んでいたのだ。
いつも海のうえで仕事をしていた航海士は、彼女の瞳の色と同じサファイアの指輪に彼女の名前を刻み、常に身に付けていたのだろう。まさか、カナトにひょいと渡すとは思わなかったけれど……
「たぶん、遺品にこの指輪がなかったこともお母さんを失望させた原因なんじゃないかな。海に落ちてなくなったかどさくさに紛れて盗まれたか……あたしにはなにも言わなかったけれど、この指輪にはきっとお母さんへの想いも込められていたと思うんだ。だから……死んだお母さんも、きっと向こうでバパに逢って誤解を解いていると信じたいな」
いつも海のうえで仕事をしていた航海士は、彼女の瞳の色と同じサファイアの指輪に彼女の名前を刻み、常に身に付けていたのだろう。まさか、カナトにひょいと渡すとは思わなかったけれど……
「たぶん、遺品にこの指輪がなかったこともお母さんを失望させた原因なんじゃないかな。海に落ちてなくなったかどさくさに紛れて盗まれたか……あたしにはなにも言わなかったけれど、この指輪にはきっとお母さんへの想いも込められていたと思うんだ。だから……死んだお母さんも、きっと向こうでバパに逢って誤解を解いていると信じたいな」