若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 大海原を閉じ込めたかのようなサファイアは彼女の指には大きすぎるが、カナトはひょいと手に取り、マツリカの左手首を反対の手で掴む。驚く彼女にすっと指輪を見せれば、なにをしようとしているのか理解したマツリカはカッと顔を赤らめる。

「――クリスマスにプロポーズする予定だったけど、今夜にする。マツリカ、俺と」

 ぶかぶかの指輪がマツリカの左手薬指にすとん、と入る。
 思わず落とさないように、カナトが両手で彼女の左手を指輪ごと握りしめ。
 祈るように。
 言葉を紡ぐ。


「結婚、してほしい」
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