若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 カナトと王氏が自分の義弟について語っていたことなど知るよしもないマツリカは、ふうん、とつまらなそうに首を振る。
 いまにも雨が降りそうな重たい空を見上げて、「やっぱり船に戻る」と言い出す彼女に、カナトも素直に頷く。

「じゃあ、今年はハゴロモで年越しだな」
「夜から年越しコンサートが開催されるって言ってたから、観に行きたいな」
「了解」
< 254 / 298 >

この作品をシェア

pagetop