若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 カナトの護衛として傍に置かれている瀬尾と尾田の二人組だが、カナトとマツリカが別行動をするため彼は自分のもとに伊瀬と尾田を残して口の堅い瀬尾をマツリカの護衛として残すことにしてくれた。このことはハゴロモの乗組員たちも了承済みだ。

「――そう、だな」

 それでもなお名残惜しそうな表情を浮かべて、カナトはマツリカの身体を抱き寄せて口づけをする。
 心配しないで、と瞳を潤ませながら、彼女はやさしく微笑んだ。

「待ってる」
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