若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「……か」

 低い声と、場違いな金色のひかりをマツリカがとらえた、その瞬間――……

「――××! ×××!」

 日本語ではない、甲高い悲鳴のような罵倒の声とともに。
 顔にハンカチをあてられる。
 ゾクっとする感触は、金色のひかりの正体でもあった女性の髪――カナトにお役ごめんを告げられたベテランコンシェルジュのもの。
 それだけではない。
 ツンとする刺激臭を浴びたマツリカは、そこにいるはずのない男の姿に気づいてしまう。

「……マイ、くん?」

 信じられないと愕然としながら。
 その場で意識を失った。
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