若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
* * *
鳥海海運のハゴロモの初就航、南太平洋スペシャルクルーズが問題なく終わった旨を詰めかけた報道陣へスマートに説明し、あとを伊瀬にまかせて尾田とともにハゴロモへ戻ろうとしたカナトは、関係者以外立ち入りが禁止されている裏口が締め切られていることを不審に思いながら改めて乗船口へ足を運ぶ。船内にはまだ多くの乗組員が乗客のいなくなった豪華客船内の片付けをつづけていたが、そこに愛しい彼女の姿はなかった。
カナトが戻ってきたのを見て、ミユキが「彼女なら一階にいる」とスタッフルームから顔を出し、マツリカのスーツケースを手渡してくれた。このまま彼女を迎えに行って一階の裏口から出ればいい、と。
「マツリカ?」
電源が落ちている一階はすでにしんと静まり返っていた。ショッピングモールの販売員は店じまいの作業を終えて裏口から撤退したらしい。だとすると、マツリカはどこにいるのだろう。
セントラルパーク沿いを慎重になって歩くカナトに、尾田が「あ」ととぼけた声をだす。
鳥海海運のハゴロモの初就航、南太平洋スペシャルクルーズが問題なく終わった旨を詰めかけた報道陣へスマートに説明し、あとを伊瀬にまかせて尾田とともにハゴロモへ戻ろうとしたカナトは、関係者以外立ち入りが禁止されている裏口が締め切られていることを不審に思いながら改めて乗船口へ足を運ぶ。船内にはまだ多くの乗組員が乗客のいなくなった豪華客船内の片付けをつづけていたが、そこに愛しい彼女の姿はなかった。
カナトが戻ってきたのを見て、ミユキが「彼女なら一階にいる」とスタッフルームから顔を出し、マツリカのスーツケースを手渡してくれた。このまま彼女を迎えに行って一階の裏口から出ればいい、と。
「マツリカ?」
電源が落ちている一階はすでにしんと静まり返っていた。ショッピングモールの販売員は店じまいの作業を終えて裏口から撤退したらしい。だとすると、マツリカはどこにいるのだろう。
セントラルパーク沿いを慎重になって歩くカナトに、尾田が「あ」ととぼけた声をだす。