若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
考えたところで推察にしかならないとマツリカはため息をついて、自分が転がされている部屋をぐるりと見回す。どこかのシティホテルの一室だろうか。カナトと過ごしたプレミアムスイートルームには劣るが、この部屋もずいぶん設えが整えられていた。
明かりがついていないから全体的に薄暗くてどこか物寂しい印象を受けるが、マツリカが横たえられていた寝台のシーツは新しいものだし、室内も掃除が行き届いている。
――ここは、どこ……?
動こうとするとぐらり、と視界が揺らぐ。
妙に白っぽい布が身体にまとわりついている。身体を拘束されているわけではなさそうだが、船上コンシェルジュの制服とは違う、ごわごわした感触から、誰かによって着替えさせられたのだと悟り、愕然とする。
薬が抜けない限りはここから逃げ出すのも難しそうだ。
「……カナ、ト」
掠れた声で、恋しいひとの名前を呼んだそのとき。
「――りいか。長旅ご苦労様」
真っ黒な燕尾服を着た上機嫌な義弟が、なぜかマツリカが着ていたはずのBPWの制服を着ている金髪美女を率いて彼女の前へ、現れる。
明かりがついていないから全体的に薄暗くてどこか物寂しい印象を受けるが、マツリカが横たえられていた寝台のシーツは新しいものだし、室内も掃除が行き届いている。
――ここは、どこ……?
動こうとするとぐらり、と視界が揺らぐ。
妙に白っぽい布が身体にまとわりついている。身体を拘束されているわけではなさそうだが、船上コンシェルジュの制服とは違う、ごわごわした感触から、誰かによって着替えさせられたのだと悟り、愕然とする。
薬が抜けない限りはここから逃げ出すのも難しそうだ。
「……カナ、ト」
掠れた声で、恋しいひとの名前を呼んだそのとき。
「――りいか。長旅ご苦労様」
真っ黒な燕尾服を着た上機嫌な義弟が、なぜかマツリカが着ていたはずのBPWの制服を着ている金髪美女を率いて彼女の前へ、現れる。