若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
《4》
マツリカの制服につけられていたGPSを辿っていたカナトは、都内のとある高級ホテルで動きが止まったのを確認し、ため息をつく。
「やっぱりイッセーか……」
カミオオオカ・インペリアルホテル・トーキョー。
世界に名を馳せるホテル王、上大岡興一の三人の息子たちのなかでもいちばん優秀とされているイッセーの長兄、上大岡一富が総支配人として拠点にしているラグジュアリーホテルである。
瀬尾とともに車でここまで追いついたカナトは、周囲にマスコミがたむろしているのを見て舌打ちをする。
「本日十五時メインバンケットホールにて――キャッスルシー代表による会見予定……これか、マツリカが言っていたのは」
そんなことはさせないと、カナトはエントランスから正々堂々と入っていく。受付を素通りし、GPSの動きが落ち着いている十二階の客室周辺に狙いを定めてエレベーターに乗り込む。時刻は午前十一時半、会見開始までにマイルはマツリカを説得して公の場に連れ出すだろうが、彼のことだから無理矢理にでも彼女を従わせようとそれこそ既成事実を作りかねない。