若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「あらぁカナトさまじゃないのぉ。あぁんなふしだらな女など捨て置いて、わたしと一緒にイイコト、しましょ?」

 彼女もまた違法薬物を摂取していたのだろう、どこか酔っぱらっているような金髪の女性を瀬尾に任せ、カナトは刑事に確認する。
 違法薬物所持、売買、そして誘拐……城崎浬の容疑はすでに固まっている。
 ホテルにも警察から事情を説明しており、すでに該当する部屋のロックは無効になっている。マツリカの現状を知らせたことでマイルを逆上させた上大岡氏の三男坊はあとでこってり叱られると思うがカナトの知ったことではない。
 警察の応援要請もホテルにお願いした。せっかくだからマスコミも利用しよう。キャッスルシーの社長の婚約発表会見はまさかの逮捕劇へと変貌するのだ。

 マイルを捕らえ、罪を白日のもとに明かす――マツリカを取り戻すため、カナトはあたまのなかで計算したすべてをいま形にする。

「あの部屋に、マツリカはいるんだな……突入する」

 コンシェルジュの制服を脱がされた彼女を想い、カナトは静かに怒りを湛えながら刑事とともに奥の部屋の扉を勢いよく押し開ける。
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