若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「――あたしの方こそごめんなさい。もっとお父さんとちゃんと連絡をとっていれば……」

 義父にも例の薬物を使用して会社を思いのままにしていたのだというマイルの言葉をマツリカが伝えれば、カナトは黙り込んでしまう。

「カナト?」
「そのことだけど……俺がどうにかする。結婚の報告と一緒にマツリカのお義父さんに運営を立て直していいか直談判する。今後、社長の逮捕でキャッスルシーの残された上層部と話し合う必要があるだろ?」
「で、でも」
「最終的に若き海運王はライバル会社を吸収合併する悪者になるかもしれないね。まぁ、俺としては社長令嬢と円満な結婚をしてむしろグループ傘下に置ければと考えていたんだけど」
「……カナト、彼方どこまで考えていたの?」

 まさかマイルの運営手腕が危ういことを見越していたときから、カナトはキャッスルシーを自分の手中に収めようと考えていたのだろうか。
 マツリカの呆気にとられた表情を面白がるように、カナトは悪戯っぽくつぶやく。まさかマイルが犯罪に手を染めて自滅するとは思わなかったけれど。
< 282 / 298 >

この作品をシェア

pagetop