若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 紆余曲折あったものの――マツリカはカナトと七月に婚姻届けを提出し、城崎祭花から鳥海祭花になった。
 これから親族による結婚式をハワイで行い、その後はふたりきりでシンガポールへと新婚旅行へ向かう予定になっている。

「あのときは、申し訳ありませんでした……っ!」
「別にイッセーさんが悪いわけじゃないですよ。マイくんに連絡しただけなんだから」
「それでも、あのとき様子がおかしいことをお伝えしていれば、あんな騒ぎには……」

 東京で起きた事件をきかされ、長兄からさんざん怒られたというイッセーは、しょんぼりした顔でマツリカとカナトに向き合っている。これはりっぱな情報漏洩だとこってりしぼられたらしい。
 マツリカは誰にでも間違いはあるんだからと許そうとするが、カナトは無表情で何も言わない。この無言の圧が後輩にはいちばん応えるらしい。

「マイくんが暴走したのはずっと逃げてたあたしのせいでもあるから……ほんとに、気に病まないでね」
「うぅ、鳥海先輩! 素晴らしい女性を奥様にされて……」
「イッセー。そういうわけだから、親族分の部屋を頼むぞ」
「おまかせください!」
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