若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
   * * *

 カイマナビーチからほど近く、ダイヤモンドヘッドのふもとに位置するカピオラニ公園。ハワイ州で最大の公園内にある巨木のしたで、マツリカとカナトはごろりと横になっている。

「この木のしたでお昼寝するのが気持ちよくて。誰にも教えなかった俺のとっておきの場所だよ」
「もっと有名どころかと思った……なんだか意外ね、若き海運王が芝生で寝転がっているなんて」
「いつか子どもができたら三人でくつろぎたいな」
「気が早いわよ」

 ようやく結婚式なのに、とくすくす笑うマツリカを抱き寄せて、カナトは愛おしそうに髪を撫でる。
 常夏の国ハワイの甘い風が寝転がるふたりを祝福するかのように、そよそよと流れている。

「早くなんかないよ。親父も年だし、孫の顔を見せて安心させないと」
「カナトのお父さんもお母さんもそればっかりじゃない」
「あんまりマツリカを追い詰めないよう釘をさしておくよ」
「あたしは別に構わないよ。カナトとの赤ちゃん欲しいのほんとうのことだし」
「わかった。結婚式終わったら毎日抱く」
「……お手柔らかにお願いします」
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