若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「しーっ。お忍びだって言ってるでしょ。アメリカでの商談があるらしくて、そのついでにリニューアルされたハゴロモに乗船するんですって。優雅よねぇ」
「つまり、親会社のボスが来るってことですよね、超特大VIPじゃないですか」
「とはいえ、下っ端の我々がかかわることはほとんどないと思うわよ。ボディガードやおつきのひともいることだし」
「ですよね……」
鳥海海運のアメリカ現地法人を親会社に持つBPWにとって、鳥海の海運王はそのさらにうえの、親会社のボスたる存在だ。戦前から四国で海運業を営んでいた初代が戦後に財を築き上げ、世界各国と渡り合うまでに成長させたという伝説を持つこの会社は、げんざい二代目を務める鳥海正路のもとで繁栄をつづけている。日本の海運四天王のなかでは知名度は劣るが、伝統と実力はたしかな、旅客船から貨物船までオールマイティに取り扱う器用な会社なのだ。
「まあ、いまの鳥海の海運王はかつての勢いがないなんていうひともいるけど……」
「ミユキ先輩?」
「つまり、親会社のボスが来るってことですよね、超特大VIPじゃないですか」
「とはいえ、下っ端の我々がかかわることはほとんどないと思うわよ。ボディガードやおつきのひともいることだし」
「ですよね……」
鳥海海運のアメリカ現地法人を親会社に持つBPWにとって、鳥海の海運王はそのさらにうえの、親会社のボスたる存在だ。戦前から四国で海運業を営んでいた初代が戦後に財を築き上げ、世界各国と渡り合うまでに成長させたという伝説を持つこの会社は、げんざい二代目を務める鳥海正路のもとで繁栄をつづけている。日本の海運四天王のなかでは知名度は劣るが、伝統と実力はたしかな、旅客船から貨物船までオールマイティに取り扱う器用な会社なのだ。
「まあ、いまの鳥海の海運王はかつての勢いがないなんていうひともいるけど……」
「ミユキ先輩?」