若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
《4》
ニューヨークのハロウィンは九月からはじまっているといっても過言ではない。
街中がオレンジ色のカボチャに占領され、商店街をはじめ住宅地の個人向けアパートメントまで骸骨や蜘蛛の巣に見立てた白い布切れを門扉に飾ったり、お化けのオブジェを踊り場に設置したり、ふだんは見ることのないおどろおどろしい装飾をあちこちで見ることができる。昼間は見ていて楽しい光景も、真夜中になると恐ろしいほどに気合の入ったデコレーションを見ると、学生時代に女友達と仮装パレードで盛り上がったことを思い出すマツリカである。
「Trick or Treat! Trick or Treat!」
すでに冬の陽気に陥っている十月中旬のニューヨーク。