若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 ――とはいえ、明日の朝にはハゴロモに乗ってるんだもんな。一週間や十日の規模じゃない、世界一周周航クラスの超豪華客船にあたしが仕事で乗るなんて、バパもびっくりよね。

 なんだか信じられないと思いながら、時間になるまでラウンジで休息をとる。船のうえでは添乗員だが、空のうえでは乗客になるのだ。
 アナウンスに導かれ、ラウンジから出たマツリカはキャリーバッグを預けて国内線に乗車する。キャリーバッグ自体はおおきいが、中身はそれほど入っていないので軽々持ち上がるが、飛行機のなかでは邪魔になるので仕方がない。ショッキングピンクのサコッシュ片手に座席を探す。

「Excuse me, are you sure you want to be next to me?」
(すみません、お隣よろしいでしょうか?)
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