若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
chapter,2 Los Angeles → Hawaii
《1》
ニューヨークにある鳥海海運のグループ企業であるアメリカ現地法人の子会社、BPWとの商談を終えたカナトは伊瀬と別れ、ハゴロモに乗船予定だというコンシェルジュ、城崎祭花について調査をすすめていた。今月末の南太平洋クリスマスクルーズに父親の代わりに乗ることを決意した彼は、添乗員のスケジュールを西島から聞き出し、前日の動きをシュミレーションする。
――前日にも日帰りクルーズを行っているのか、となるとLA入りは前日の夜になるか。
偶然を装い彼女に近づくとなると、なるべくひとりで行動した方がいいだろう。伊瀬は渋い顔をするだろうが、ホテルで待機させて当日に合流すれば問題ない。
ニューヨークからロサンジェルスまでの航空券は会社で用意しているというので、西島にマツリカが乗る便を教えてもらい、こちらからもビジネスクラスを予約した。座席までは選べないが、同じ便の同じクラスをつかうことでラウンジやゲートで偶然を装い接触することは可能だろう。