若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「そんな必要ないわよ。けっきょく船に乗ったのは高齢の父親じゃなくて若き海運王の方だから。噂だと女性をとっかえひっかえしてるっていうから、観光も女友達とワイワイしながらするんじゃない?」

 いいわねボンボンって、とうんざりした表情のミユキを前にマツリカは硬直する。

「鳥海の若き海運王?」
「そ。かつて海運王の息子と呼ばれた――鳥海叶途よ」

 ――カナト? その名前、どこかで。
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