若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 北京語をなんとなく理解しているものの、日常的につかっているというわけではなさそうだと考えた餘江はここでマツリカの存在を思い出したのだろう、支配人の仕事で多忙な彼が対応するより、なんでも屋であるコンシェルジュに仕事をまわす方が手っ取り早い。中国語を話せるスタッフはほかにもいるが、華語を理解できる人間は少数派だ。
 だから白羽の矢が自分に立ったのかとマツリカは苦笑する。

「了解です。あとはお任せください」
「頼んだぞ」

 シンガポール系中国人や台湾人がつかう言語は華語と呼ばれ、普通語としてテレビなどでつかわれる北京語に近いがじゃっかんの差異がある。日本でいう方言に近いが、中国全土の普通語の普及率は七割程度なので、場所によっては通じないこともあるのだ。

晩案(こんばんは)幾歳(何歳ですか)?」
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