若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「それとも、俺に取り入るよう父親に命じられたか? そうだというなら、ありがたく抱いてやるけど」
「ち、違います!」

 どうしてここで父親が出てくるのだ。養父は無関係なのに。自分が実父のことを知りたくてBPWのコンシェルジュとして働くことを決意したのに。まさか彼はあたしのことをスパイか何かだと思っている……? マツリカはその可能性に気づいて瞳をしばたかせる。
 とはいえ、わけがわからないまま身体を奪われるわけにはいかない。カナトはまるで眠れる鷹が目を醒ましたかのような鋭い視線をマツリカに向けている。猛禽に狙われたかのような眼光に、身体は囚われていた。
 このソファのうえでも女性と情事を行っていたのかもしれないと考えるだけでおぞましく感じてしまうのに、なぜだろう、もっとこの瞳に見つめられたいと感じてしまう。

「逃げようなんて考えるんじゃないぞ。おとなしくしているほうが身のためだ。正直に答えてくれればひどいことはしないから」
「逃げる……?」
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