若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
* * *
けっきょくこの日の夜はプレミアムスイートルームに併設されている使用人控え室で過ごすことになった。カナトがマツリカのキャリーバッグを手放してくれなかったからだ。
「同じ部屋で泊まるなんて無理です、無茶です、無謀です!」
「ここのベッドをつかえばいい。俺はソファでも雑魚寝でも構わない」
「使用人控え室にも簡易ベッドがありますので問題ありません。キングサイズの立派なベッドはカナトさまがおひとりで悠々自適に過ごされるために必要なものだと思われます、一介の新人コンシェルジュが使用する類いのものではございません!」
「……恋人になるなら気にすることもないと思うが」
「あたしはカナトさまの恋人になるとは言ってません! クルーズのあいだ周囲を欺くための恋人役なら承っても構わないと口にしただけです」
「同じじゃないか」
「違いますっ」
けっきょくこの日の夜はプレミアムスイートルームに併設されている使用人控え室で過ごすことになった。カナトがマツリカのキャリーバッグを手放してくれなかったからだ。
「同じ部屋で泊まるなんて無理です、無茶です、無謀です!」
「ここのベッドをつかえばいい。俺はソファでも雑魚寝でも構わない」
「使用人控え室にも簡易ベッドがありますので問題ありません。キングサイズの立派なベッドはカナトさまがおひとりで悠々自適に過ごされるために必要なものだと思われます、一介の新人コンシェルジュが使用する類いのものではございません!」
「……恋人になるなら気にすることもないと思うが」
「あたしはカナトさまの恋人になるとは言ってません! クルーズのあいだ周囲を欺くための恋人役なら承っても構わないと口にしただけです」
「同じじゃないか」
「違いますっ」