若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「ええ、残り二ヶ月間よろしくお願いします」

 あくまで他人行儀なマツリカを見て、寂しそうな表情を浮かべていたカナトだったが、ふと思い立ったように口をひらく。

「ずっと部屋に閉じこもって仕事をしていたが、そろそろ息抜きがしたいと考えてる。明日は寄港予定だったよな?」
「はい。ハワイのワイキキが最初の寄港地になります」
「わかった。それじゃあ服を用意しなくてはいけないな」
「服?」

 きょとんとするマツリカに、カナトがくすりと笑う。

「俺の恋人役としての最初の任務は、ワイキキ観光でのデートだからだ」
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