義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
 えへへへ。
 GW残りの連休は2日ある。貸そうかなの山に積んだ本は5冊。
 足りないかな。
 異世界転生じゃない本も読むかな?

 GW最終日、和樹がリビングに現れた。
 次の本の催促かな?
「姉ちゃん……俺さ……」
「ん?何?」
 私の隣に和樹が腰を下ろす。
 ふおう!
 半年間口をきいてくれなくて、それから話をしてくれるようになったけど、本の貸し借り以上の会話がなかったのに……。
 ソファに腰を下ろすということは、しばらくは一緒にリビングにいる構えなわけで……。
 お姉ちゃんと、会話をしてくれるんですね!
 な、な、何の話をしよう。
 また、笑われるようなことがないように、えっと、まずは、本の感想とか、そっちの方向で会話を進めるべきかな?
「和樹、本は面白かった?」
 和樹がソファに乗ってたクッションを抱えて、顎をクッションに乗っける。
「ああ。よく書けてるものもあったし、うそくせぇものもあった」
 ぬ?
 うそくせぇ?
 いや、全部フィクションだけどね。どういう意味だろうか?共感できなかったってことかな?
「姉ちゃんなら、信じてくれると思うから話すけど……」
「え?何?」
 私だから話してくれる?
 うっ。
 やばい、うれしすぎだ。
 なんだ、和樹ぃ!半年口をきいてくれない間に……。
 お姉ちゃん喜ばせるポイントをついた言葉まで覚えたのね!
 ゆきちゃんにラインで報告!あ、違う、私だから話してくれるんだから言えない。いや、でも、言いたい。言えない!
「母さんと父さんには黙っててくれよ」
 うんうん、うんうん。子供だけの秘密ね!
 了解、了解!
 私と和樹二人の秘密!
 了解、了解!
 首がぶっちぎれるんじゃないかってくらい、縦に振り続ける。
「俺さ、異世界転生したみたい」
 は?
 今、なんとおっしゃりました?
「この間、部活でサッカーしてる時にゴールポストに頭ぶつけたんだけどさ」
「え?聞いてない!大丈夫なの?」
 和樹の頭をがしっとひっつかむ。
「いや、もう大丈夫だって。ちょっとたんこぶできただけだし、それもとっくに治ったし」
「本当?本当の本当に?」
 うっとおしそうに腕を振り払われました。
 ぐにゅ。
「とにかく、ぶつけた頭は大丈夫なんだけど、ぶつけた拍子に前世の記憶が戻ったみたいなんだよ」

■3

 えっと……。
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